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市民コラム

2018年04月03日 火曜日 18時25分【コラム】スーツを脱いで三浦で2拠点生活を始めました… (寄稿者:おっさんフリーランス)

昨年、ニュージーランドを旅した。人間の数より羊の数が多い国だ。それもそのはず。島国である日本と面積はほぼ同じだが、人口は469万人。横浜市の人口に100万人を足した数に過ぎない。北島の主要都市であるオークランドを抜けて北下すれば、ひたすら牧草地帯が続き、人の姿はあまり見かけない。毎日満員の通勤電車にのり、東京の人混みの中で生活している僕にとって、日頃の喧騒から逃れることのできた一週間であった。
人口は少ないが、住んでいる人種は多様だ。オークランドや宿泊した町では、欧米人を始め、アジア系の人々なども多く見られた。その中で独特の刺青をしているのが、「マオリ」という先住民だ。マオリとは「普通」という意味で西洋人と自分たちを区別する為に使用されたらしい。過去には色々な悲劇もあり、現在「マオリ」系の人口は約80万人。NZの人口の17%に過ぎない(2015.3現在)が、「ハカ」という民族舞踊は今もなお大切にされている。

2年前のラグビーワールドカップで優勝した代表チーム「オールブラックス」が試合前に行っていたのがこの「ハカ」である。彼らは「ハカ」を儀式として行うことで、自分たちを鼓舞する。色々な人種の人達がこの儀式で1つになるのだ。僕もこの民族舞踊を実際に見たが、他国の人たちを柔軟に受け入れながらも、伝統を受け継いで行こうという想いを強く感じた。
短い旅の中で感じたことは、「take it easy.」(気楽に行こうよ)「tomorrow is the another day.」(また明日があるさ)といった人々の大らかな精神。海辺や高台など眺めの良い場所にはベンチが置かれている。休みの日には、そのベンチで一日風景を眺めながら過ごす人も多いと聞いた。休みの日でも予定を決めて、慌しく過ごしていた都内での日常を見直すきっかけとなった旅でもあった。

僕は福島で生まれ育った。大学入学を機に上京し、それから約30年間、東京で主に再開発の仕事に携わってきた。都市部では防災性の維持、機能性を高める為に再開発のまちづくりは必要だが、サラリーマンとしての仕事だと、面白いまちづくりよりも、利益性が優先される。また。箱ものを作るだけでは意味がないのではないかと感じるようになった。
都会にしか住んだことのない人は田舎を持たない。僕の作ったマンションで生まれてくる子供たちは「地元」はあるけど、「田舎」は持っていない。自分自身に田舎があるように、都市に住む人の田舎を作りたい。そんな想いを持つようになった。
そんな折、「関係人口」という言葉を耳にした。住んでいなくても継続的に特定の地域に係わる人を指す。少子高齢化、人口減少、消滅可能性都市、限界集落、働き手不足に空き家問題。地方都市も危機感を抱えている。ひょっとしたら「関係人口」という概念が、都市と地方の両方を救うことにかもしれない。

サラリーマンという枠組みの中で、自分を殺して生きてきた。生活は安定していた。でも自分自身を正直にさらけ出したい。与えられたノルマじゃなくて、マルチワーカーとして生きてみたい。それが定年前にスーツ脱いだ理由だ。

介護という問題もあるために、三浦と妻の実家の2拠点居住を始める。きっかけは、いつかは海の近くで生活したいと考えていたこと、水田がない田園風景、海に囲われ高低差のある地形がどことなくニュージーランドの風景に似ていることが理由だ。東京から比較的近い場所で、自然が豊富なことも決め手となった。関係人口を都市と地方の両方から見てみたい。
三崎のまちで知り合った若い人に、「まちには法律じゃなくて『掟』があるんですよ」と聞いた。移住してきた彼らは、漁師まちによくある神棚を祭っていた。そう、町の伝統や習慣を大切にしながら、都市との関係を作っていくことが大切なのだと思う。
外部から来た人間が「関係人口」なんて難しいことを言っている。縁もないこの町で、受け入れてもらえるか、不安もつきまとう。
今まで30年間、都市の発展を仕事上の目的とし頑張ってきた。家族のことも顧みず仕事をしていた。僕は都市もサラリーマンも否定するつもりもない。僕には、今まで培ってきた経験しかないのだから。それを活かし微力ながらも、都市と地方をつなぐ役割を担いたい。
スーツを脱いだ今日この日、僕の目的は変化する。

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